実はわたし、結構「へんてこな」お店が好きなんです。

例えば、旅行に行っても有名な観光スポットに行くよりも、偏屈そうな店主が一人で切り盛りしているような喫茶店に心が惹かれてしまいます。その手の店はお世辞にも洗練されているとはいいがたく、モヤモヤってしていて、そのぼやけている感じが好きなのです。この手のお店が何故好きなのかというと、その「ぼやけ」の向こうになにか素晴らしいものがある予感がするからです。まあ、予感だけで大抵は何もないのですが。

その「へんてこな」お菓子屋さんが住宅街のなかにありました。

友人の家に遊びに行く途中でそのお店はありました。

見た目は地味な感じで、壁に「パイのお店マーテル」と書いてあるのと、看板が出ていなければほぼほぼ普通の住宅。かなり分かりづらいく、一緒にいた友人に「変わった店だね」と感想を言うと、「昔からあるパイ専門のお店だよ」と、教えてくれました。友人は続けて、「せっかくだから、パイを買っていく?」と言いました。食いしん坊なわたしは「もちろん」と答えました。

レモンパイ

店の自慢はレモンパイ

この店の名物はレモンパイだそうですが店のディスプレイのなかにはレモンパイは一個しかありませんでした。さすが人気の商品だと思ってるとと、お店のおばちゃんが「このレモンパイは昨日のだから半額で」「新しいのもあるけどどちらがいいかな?」と言いました。なるほどだからショーケースには一個しかなかったんだ、とみょうに感心してしまいました。 そうして、「せっかくだから出来立てを」となり、新しいレモンパイを一個、ついでにアップルパイも一個買いました。

さあ、食べてみよう

友人の家に行き、お茶を入れてもらい、アップルパイを口にいれました。味はいかにもアメリカンな感じの、甘くて素朴な味がしました。やっぱりシナモンと林檎の組み合わせは最高と思いつつ、レモンパイを新たに口に入れました。こちらもまたレモンパイって感じの味で、レモンの酸味と砂糖の甘さがトロトロに溶け合って、美味しかったです。

アップルパイ

どうして、パイの一切れで満足したのだろう

パイの一切れでわたしのお腹は満足しました。いつもならきっと、一切れでは満足できなくて、もっとたくさん食べてしまったと思います。それがなかったのは、食べるまでに色々な道のりがあったからだと思います。

「へんてこな」お店を見つけたり、一風変わった売り子のおばちゃんと話したりとか、そんな出来事が単なるレモンパイを少し特別なレモンパイに仕立てあげ、それを食べることによって、ちょっとした短編小説をみたような気分になり、わたしの心とお腹は満足したのでした。

これがそのへんのスーパーで買ってきたようなレモンパイならば、お腹は満足しても味気なくて、心が満足せず、ついつい二切れ、三切れと口に入れて食べるぎてしまったと思います。

わたしのアレクサンダー・テクニークの講座もただ身体が楽になるだけではなくて、その毎回が短編小説を読んだあとのような心に訴える内容にできたらいいなと、ふとレモンパイを食べながら思いました。